ふわり…―――
大好きな匂いがした。
花のような匂い。
ふわり…―――
アイツの匂い。
ふわ……―――
けど、最近その匂いが薄らいできている気がする。
ふ………―――
オレでも気づけない時があるから。
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This flavor is familiar
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「あっ、ルーシィ!おはー」
「ルーシィ!!」
ギルドに入ると一番最初にハッピーとナツが声をかけてきた。
「ナツ!ハッピー、おはよ!」
彼らの座るテーブル席に駆け寄る。
テーブルの上には食べ終わったあとのお皿が数枚とまだ少々中身の残っているファイアドリンク。
ハッピーは口に魚をくわえ満足そうな笑みを浮かべてる。ナツはテーブルに身を乗り出しながら右手をあげ、「よっ!」と挨拶した。
「食べ散らかしてるわねー。ミラさん大変そう…」
「大丈夫だよ。ミラはルーシィみたいに手際悪くないから…あい」
「そんなこと言うのはこの口かしら猫ちゃ〜ん」
そういいながらルーシィはハッピーの両頬を抓る。
「ルーシィ、朝っぱらからんな怒ってると“けつ”と…あとなんかが上がるんだぞ?」
「“血圧”!!一体誰のせいだと思ってんのよ!」
席に座り直して、些か真剣な顔をして言うナツ。そんな彼にツッコミを返しルーシィは、はぁとため息を吐いた。そして付き合いきれないというようにクルッとカウンターの方へ向き直ると、朝食を注文しにミラジェーンの元へと去って行ってしまった。
そんなルーシィの背中を無意識に目で追っていくナツ。その顔は若干むくれていた。
「おはようございます!」
そういって現れたのはウェンディ。その後ろからシャルルがついて来ている。
「シャルルーーーー!!」
ハッピーは彼女の姿を目に入れた途端アプローチをするために駆け寄った。
「よう!ウェンディ!!」
ナツが席に座ったままウェンディに手を振って挨拶をした。
「おはようございます、ナツさん」
ウェンディはナツに返事を返すとカウンターに座るルーシィの元へ向かった。
「ナツぅ〜、ただいま!」
「おう、おかえり!」
上機嫌でナツの元に帰ってきたハッピー。その顔からシャルルに悪いようにはされなかったということが伺える。
嬉しそうに頬を染め、両手でそれを覆いながら腰をフリフリとしている。
「よかったな」
「あい!」
小躍りを続ける相棒を眺めていると不意に鼻を通る魚の匂い。
「…ハッピーは魚の匂いがすんな!」
なんて言ってケラケラとナツは笑った。ハッピーも合わせて笑ってくれるものだと思っていたら、向けられたその顔が神妙な面持ちだったためにナツは少々面食らった。
「そういえばナツ。今日はルーシィに気づかなかったね」
「あ?」
いつもはハッピーよりも先にルーシィを匂いで見つけるナツ。しかし今日はハッピーがルーシィに声をかけたことにより彼女の存在に気がついた。
「あー、そういや最近ルーシィの匂いがわかんねぇときがあんだよな…」
「わかんない?」
「ルーシィさんおはようございます」
「ウェンディ!おはよ」
「隣、いいですか?」
「ええ、どうぞ?」
朝食に卵のサンドイッチを注文したルーシィ。それとダージリンのホットティーをゆっくりしたペースで口に運んでいる。
その隣でウェンディはオレンジジュースを飲んでいた。
「……?ルーシィさん、香水とか…つけてます?」
「ううん?なんで?」
「何だかいい匂いがします。何だろう、…花?」
そういいながらルーシィに鼻を近づけるウェンディ。
「シャンプーか何かの匂いかしら。そんなに匂う?あたしには全然わかんないんだけど」
「私も滅竜魔導士ですから」
ウェンディはそのままどんどんと顔を近づけていき、ルーシィに抱き着いた。
「ええ?う、ウェンディ?」
「……ちょっとだけ。こうしててもいいですか?」
母親も父親も知らないウェンディ。もしかしたら甘えたいのかもしれない。ルーシィはそっと抱き寄せその頭を撫でた。
しばらくそうしていると、ふんわり笑いながらウェンディが顔を上げた。
「ルーシィさんの匂い…落ち着きますね。ふふ、花のような匂い。……あ、でもたまに土のような、大地の匂いもしました」
「ええ!土って…わたし、埃っぽいのかしら」
ルーシィは大慌てで脇やら腕やらの匂いを嗅いでいる。
「何してんだよ、ルーシィ」
そこへやってきたナツとハッピー。
「あい。とうとうルーシィがおかしくなったよ」
「違うぞハッピー。前からだ」
「あんたたちは……」
「おかしくないわよ!」と叫ぶルーシィとそれを笑うナツとハッピー。彼らを交互に眺めていたウェンディは微かに薫ったその人の匂いに頬を緩めた。
「ほら、仕事行くぞルーシィ!」
「あっ、ちょっと待ってよ!?」
「おいらをおいてかないでよ二人とも!」
騒がしい彼らが仕事に出かけた後、ウェンディの傍に戻ってきたシャルル。
「どうかしたの?ウェンディ、顔が笑ってるわよ?」
「うん。シャルル、ナツさんの匂いは大地の匂いだったよ…」
This flavor is familiar
“馴染みある匂い”
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お久しぶりです。
だいぶ間が開いてしまいました。
久しぶりに来てみたら沢山の作品や初めてみる方などいろいろ増えててびっくりしました!
いいですね。
ナツルーよ、もっと広まれ!!
何となく思いついたネタでした。
自分の匂いってわかんないですよね。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
This flavor is familiar ナツルー
- 孤翼
- 2011/02/10 (Thu) 13:35:52