※「今日も」の続きです。
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エルザと夜、一緒に眠るようになって一週間が過ぎた。エルザは完全にジェラールを不眠症と勘違いしたらしく、治るまで一緒に寝ようと言う。
ジェラールから言わせれば、完璧に逆効果でしかないのだが、半ばエルザに押し切られるような形でベッドを共にしていた。
一緒のベッドにいるからと言って、エルザに触れることもできず、ジェラールは結局一睡もできぬまま、朝を迎えることとなっていた。
「ジェラール、大丈夫か?」
「・・・・・今日は調子が悪いから家で休むよ」
「そうか。私はちょっと、ギルドに行ってくる。ゆっくりしてろ」
「ああ」
さすがに寝不足が限界を迎えたジェラールはギルドに行くことを放棄し、家でエルザがいない間に眠ることにした。
エルザがドアを開けて出て行くと同時に、即座に横になると、今までの疲れが一斉に出たのか、あっという間に眠ってしまった。
そして、ジェラールが目を覚ました頃、時計の針は夕方の5時を指すところだった。どうやら、ずいぶん寝入ってしまったらしい。
もう一度、ごろんと横になると考える。
エルザは一体なぜ、あれほど無防備なのかと。あんなことをした自分を信じてくれるのは嬉しいが、このままでは自分の身が持たない。
それでも、最初の頃はまだ緊張していたのかもしれない。だが、毎晩一緒に眠ることで、その緊張も解けたのか前にもまして無防備になっていた。
最近はベッドに入り、眠りに落ちると、すぐ抱きついてくるようになった。確かに男として嬉しくないわけではないが――。
エルザにそのつもりがないのがわかるだけに辛いものがある。
さらに、参っているのが最近はパジャマの下に下着をつけていないことだ。いや、決してエルザが寝てるのをいいことに触ったりしているわけではないのだが。
それでも、あれほど抱きつかれれば、布の下の感触でなんとなくわかる。
本当にそろそろ勘弁してほしい。過去の行いを考えると、理性に自信があるとは口が裂けても言えない。
このままでは近いうちに限界がきそうで、ジェラールはため息をつき、今日の夜を想像して頭を抱えた。
そして、エルザが帰ってくると、夕食をすませ、シャワーを浴び、同じようにベッドに入った。
ジェラールは今夜も徹夜を覚悟してエルザの隣に横になる。
エルザはいつものように、すぐ眠りにつくと、これまたいつものようにジェラールに抱きついてきた。
ジェラールはその自分の胸に当たる、柔らかい感触を全力でシャットダウンすることに全神経を集中させた。
少しでも、体制をずらしたくて、エルザをやんわりと押し返すが、それに意識がなくとも気づいたのかエルザがぎゅっと抱きついてくる。
さっきよりもリアルに、はっきり言ってしまえば、下着をつけていない胸の感触が当たってジェラールの脈が速くなった。
それと同時に、ジェラールは自分の理性がぐらついていくのを感じていた。
――もう、少しくらい触ってもいいんじゃないか。
――これだけ、我慢したのだから少しくらい。
――俺たち、付き合ってるんだし。
そんな発想が頭に浮かんでくる。エルザの顔を見て、頬を撫でると、引き寄せられるようにその唇に自分の唇を近づけた。そして唇と唇が触れようとした瞬間――、
「うう~ん」
エルザが呻き声をあげると、寝返りを打つ。そして、ジェラールは――、
顔を真っ赤にしてエルザから急いで顔を離した。
危なかった。もう少しで昔と同じ過ちを繰り返すところだった。もう二度とあんなことはしたくない。絶対にしない。
ジェラールは限界ギリギリの理性で、朝まで耐え続けた。
END
そろそろ、限界になってきたジェラールです。今回結構危なかったです。
さすがに不憫すぎるかな。
限界 ジェラエル
- 理乃
- 2011/02/07 (Mon) 02:25:32